เข้าสู่ระบบ真っ暗な何処までも続く緩やかな下り階段。一段一段が大きく、空間も広い。眼前に迫る魔物の大群に狙いを定め、前傾姿勢、左手を前に構え刀を抜く体勢をとる。チキッ、鞘を握っている右手の親指で少しだけ鍔を押し上げる。「アストラリア流抜刀術」 神眼で捕らえた魔物の群れを全て一太刀で薙ぐ様な、風の魔力を纏った衝撃波を放つ!「飛天!」 ザヴァアアア―――!! 断末魔の声を上げて斬り裂かれていく大群。キィン、静かに素早く納刀する。さすがにこう何回も使わざるを得ない状況が続くと、超成長の恩恵もあって、慣れてくるものだ。魔物を片付けてから、次の一段を降りる。その瞬間、脳内に流れ込んで来る過去の自分ではない自分の記憶。「ぐっ、う、が、あああ!!」 一人分の悲劇的な人生の記憶が一気に流れ込む。一瞬の内にその人生を追体験する衝撃に、脳や心が悲鳴を上げる。頭を押さえ、地面に手を付き屈み込む。「くっ……、ハァ、ハァ…、よし、耐えたぜ……」 中に入ってから一段ずつ、ずっとこれの繰り返しだ。一段降ると魔物の大群、更に一段降ると過去の記憶の追体験。記憶が流れ込んでくるときはハゲるんじゃないかっていうくらいの頭痛に衝撃が心の中を駆け巡り、身動きができなくなる。 記憶と魔物が同時に襲って来るときもある。そのときは神気結界で身を守りながら、その痛みと衝撃が治まるまで待つしかない。そして治まった瞬間に自分を囲む大群の掃討だ。 もう自分が何段降ったのかもわからない。既に数千は優に超える人生の記憶を追体験した。正直情報量が多過ぎて、一々その一つ一つを処理している余裕はない。それに……「いい加減、飽きてきたな……」 超精神耐性はパッシブスキル、所謂常時発動中ってことだ。逐一発動させる必要がない。それにこれだけ何度も見せつけられると、どんな悲劇だろうが慣れてくる。良くも悪くも慣れとは恐ろしいものだ。最早その映像を映画館のスクリーンの前で他人事の様に眺めている感覚。どんな名作でも同じジャンルを立て続けに何回も視聴すれば飽きる。面倒なのは、その時の衝撃が物理的にキツイということだけだ。 そしてこの下り階段がある巨大な空間、光が全くない。探知や神眼は常時発動している。肉眼では何も見えないのだ。最低でも心眼がなければ入った瞬間に詰んでいた。さすが神の試練、酷過ぎる初見殺しだ。要するに
……ここは何処だ? 見たこともない景色に、地球よりも遥かに高度な文明。その街が、世界が炎に包まれている。逃げ惑う人々、悲鳴に叫び、銃火器の鳴り響く音。そこかしこで爆発音も聞こえる。人々を襲っているのは……、この高度な文明には似つかわしくない、時代錯誤のような剣や槍を手にした輝く鎧を纏った奴らだ。そして、これは……、地下深くの避難シェルターか? 避難しているのは……、前世の姿の俺とアヤ? いや、似ているが少し違う……。周りに身を寄せ合って震えているのは家族や友人達、その家族か? それに俺達の抱いているのは赤ん坊?! ドゴオオ――――ン!!! シェルターの壁が破壊される。「漸く見つけました。残りの清らかな魂の二人、いや、特異点の……」 これは……、泣いている、……アリアなのか? だが全身血塗れだ、返り血だろうか?「あの二人以外は殲滅かよ……。全く、嫌な仕事だ……」「天界の総意である以上、私達に拒否権はないわ……。二度目とはいえ……。苦痛を感じる前に魂を刈り取るしかない……!」 ルクスにサーシャか? だが何て冷たい目だ……。そして二人もアリア同様夥しい返り血で汚れている。「くそっ……、こんなところまで……。何なんだ、お前らは……?!」 震えている……? それに神の放つ神気による威圧で身動きが取れない。「私達は天界から降臨した神……。欲望に狂った全ての人間達の粛清……、そしてナギストリア、アガーシヤ、あなた方二人の魂の救済に来たのです……」「救済……だと? どういうことだ! 神が直々に人間を殺しておきながら……、何を言っているんだ……?!」「私とナギの二人だけ……? じゃあここに居るみんなは? それにこの子は……?! まだ産まれたばかりなのに……!」「……っ、申し訳ありませんが、例外は認められていないのです……」 涙を流しながら答えるアリア。「悪いな……、そういうことなんだ……」「せめて苦しまないように……、それが私達にできる唯一のこと……」 家族や友人達、その家族が次々と、一瞬の内に命を奪われていく絶望的な光景。悲哀、憤怒、後悔、引き離されまいと足掻く必死の抵抗。神の、人間の、互いの心の痛みが伝わって来る。 何度もフラッシュバックする絶望しかない光景。世界が、この地上が滅びる……。 誰か助けてくれ!! この神の名を語る悪魔共から…
「な……っ、私の奥義でも滅却できないなんて……?!」 アリアが驚きと困惑の声を上げる。「フッ、さすがは神の奥義。だが貴様の技はあの腑抜けの記憶から全て知っている。アストラリア、貴様では俺には勝てん! さあ自分の技で自分が吹っ飛べ!!」 傷だらけのまま起き上がり、暗黒剣を頭上高く構えるナギストリア。嘘だろ!?「ジェノサイド・エクスキューション!!!」 黒いレーザーのような剣閃がヤツの大剣から放たれる! マジかよ、アレを撃てるのか?「くっ!」「「避けろ/て! アリア!!!」」 サーシャとルクスの二人が寸前のところで、アリアをその軌道線上から救い出す! ゴオオオオオオオォウッ!!!! 黒い一撃が通り過ぎた跡は、大地が黒く爛れ、腐敗臭がする。負のエネルギーの影響か? その地面を見ているだけで吐き気がしそうだ。「フン、避けたか……。ハア、ハア……大人しく闇に飲まれれば良いものを……」 ナギストリア、かなり消耗しているようだな。これなら勝てるかもしれない。「仕方ねえ、三人同時にいくぜ! 最大出力だ、構えろ!!」「ええ、そうですね……、これで私達の過ちを消し去ることができるのなら」「仕方ないわね、やるしかない!」 三人がそれぞれの神器を構える。「分かたれよ、クローチェ・オブ・リーブラ!」 パキィーン!! アリアの神器が2つに分離し、それぞれの手に握られる。あれは二刀にも変化するのか? ならば二刀流の奥義を使うということか、初めて見る。ならばヤツも知らない技ということになるな……。「いくぞ! 神格を燃やせ、神気を高めろ!!」「「「はああああああああ……!!」」」 三人の神気が高まり、天高く渦巻く! 離れた此方までその余波がビリビリと伝わって来るほどだ。「うぅ……、凄まじい神気だ……。近づくのも危険なくらいに」「うむ、神が三位一体となって放つのだ、小規模ながら宇宙創造のビッグバンにも匹敵するほどの力が生まれる。いくらヤツとて無事では済まん。ゆけ! 我が子達よ、あの悪鬼を消滅させるのだ!!」 大丈夫なのか? 想像もつかないが、エリシオンが崩壊するかもしれないほどの力の高まりを感じる。ダメだ、立っていられない。力なく膝を着く。「喰らえ! 軍神の闘気を! 奥義・エクスプロージオ・カノン
ナギストリア? 誰だよ、俺の元の名を捩ったようなこいつは。「ククク……、漸く自分の肉体を得ることができた。神の秘術を使って俺を転生させてまでその体から取り出すとはな。しかも貴様らはあの時の三人、それに大神までもがガン首揃えるとはありがたい。さあまとめてぶっ潰してくれる!」 背中から巨大な黒い大剣を抜くナギストリア。おいおい、いきなりバトル展開かよ、説明してくれ。「待て、何なんだそいつは? ちゃんと教えてくれよ」「……っ、彼は私達神々が二回目の大虐殺のときに救ったときのあなたです……」 アリアが口を開いた。「ああ、だがまるで感じが違う。あんな物身に着けてはいなかった、何の力も持たない只の人間だったはずだ」 ルクスも知っているのか。だが俺の心の中で語り掛けてきたヤツの証言と一致する。ここが全ての憎悪の始まりとか言ってたしな。「あれが……、遠い過去の俺の姿なのか?」「ええ、その通りよ。彼とあなたの大切な人、今はアヤと名乗ってるのよね、彼女と一緒に救出したときのあなた。でも、まだその時の姿を保っているなんてね……」 サーシャも現場にいたということだな。「だがあの異常な禍々しさは何だと言うのだ? あの時のヤツにあのような力などなかったはずだ……」 ゼニウスは大神だ、さすがに知っているってことか。アリアと話して聞いた限りじゃ、単なる普通の人間だったと言ってたしな。それにしては異常だ、とても人間には見えない禍々しさ。鑑定しても何も視えない。体を乗っ取られた時も俺より遥かに強力な技を放っていたし……、わからないことばかりだ。「やはり神というものは蒙昧だな。貴様らは自分達の行いが全て正しいと思っている。救済だと? 笑わせるな! 俺とアガーシヤを救うと言っておきながら、一緒にいた俺達の家族や友人達までを惨殺したクズ共が何をほざく。それに俺達はあの時言ったはずだ、大切な人達を殺されてまで、貴様らのそのくだらない救済など受けたくないと……。無力な自分に歯ぎしりしながら、泣きながら訴えたはずだ。彼らと一緒に殺してくれとな……。それを……、そして勝手な救済とやらで別世界に飛ばしやがった。そのせいで俺もアガーシヤも余計な苦しみを味わうことになったのだ……、気の遠くなるような年月をな!」 そうか、そういう理由があったのか……。恐らくアガーシヤとはアヤのことだ。ヤツを
転移で到着したと同時に、恐る恐る目を開ける。「ここが…、天界…?」 一面の花畑、いや、美しい花々が咲き乱れる世界だ。そしてギリシャ神話に出てくるような建物、上がシンプルな柱はドーリア式、豪華な装飾が付いているのはコリント式、その中間くらいの装飾はイオニア式だったっけ? 実際に見て知ってるのはパルテノン神殿みたいな建築様式くらいだが、そんな豪華な装飾の建物が一つ一つは離れているがどこかしこに建てられている。どこからか琴の音も聞こえてくる。花々にはこれまた見たこともない綺麗な蝶や、羽の生えた小さな妖精達が戯れている。「すごい、なんて美しい……」 陳腐な台詞しか出て来ない。それ程目の前に広がる光景に圧倒された。「ここが神々が済む至上の楽園エリシオン、ですが天上にあるわけではありません。あらゆる世界へと繋がる次元の中心に存在すると言った方がいいでしょうね。さて、物見遊山ではないので早く行きましょう、あそこへ」 アリアが指差した方角の一際小高い丘の上に、一番大きく、豪華な神殿が見える。もう少しこの綺麗な景色を堪能していたいが、仕方ないか。花が咲き誇る中を駆け抜けて、丘の上へと続く階段を昇る。振り返って上から眺める景色もこれまた凄い。何処までも果てのない花の園。あの平原でずっとゴロゴロしていたいと思うという欲望に駆られてしまう。まあ、それはまた次に来れたらでいいか。転移で来れるのなら俺にも来れるかも知れないしな。そうこうしている内に丘の上に到着。 そこには白髪のこれぞ神話の神様って感じのイメージの威厳溢れるムキムキのじいさん。古代の白いギリシャ装束に立派な髭を蓄えた人物が、俺達を待っていたかのように腕を組んで立っていた。見た目はじいさんだが、いかつい。そして全身の筋肉が凄い。ボディビルのポーズ取って欲しい。そしてその立派な髭をわしゃわしゃしたい。「待っておったぞ、アストラリア。そしてお主がカーズじゃな。話はこやつから聞いておる。余は大神ゼニウス、全ての神の親にしてこの天界を治める者だ!」 同時に彼の体から目を開けていられない程の眩しい光が放たれる。後光か? だが眩しすぎて何も見えねえよ。「ゼニウス様、お言葉ですが……。その後光鬱陶しいのでやめてください」 気のせいかな? アリアにツッコミ入れられてる?「ハッハッハ! スマンスマン、久方振りの下界からの
誰だ?! 心の中に声が響いて来る。しかも且つての自分自身の声だ。だが、こんなにも悍ましく憎悪に塗れた様な不気味な声、聞いたこともない……。(お前は今、怒りという負の感情に飲まれたのだ)「ぐ……、うっ……、ぐああああああああ!!!!」 何だ? 勝手に魔力が、しかも常闇のような真っ黒な魔力が体から溢れてくる。制御も出来ない。何だってんだ!?「お前は俺にとって一番言ってはならないことを口走ったな……」 誰だ? 誰かが勝手に喋っている。自分の体が言うことを聞かない。(あの雑魚に怒りを感じたのだろう? バカな犬だ、最愛の者を何度も失ってきたお前の心に一番言ってはいけないことを……)「「「それがどうした?!! なんだ?? 怒ったのか邪神殺し!!」」」 やめろ! 余計なことを言うな! コイツは俺じゃない、死ぬぞ!!!「ククク……、やはり死にたいらしいな……。まさか自殺願望者だったとは、なら望みを叶えてやろう」 くそっ! どうなってる!? 誰なんだよ、俺の体を勝手に操っているのは。更に黒い魔力が竜巻の様に吹き荒れていく。「「「な、なんだ……、コイツのこの異常なドス黒い魔力は?! しかも赤だった髪の色まで真っ黒に……。どうなってやがる?!!!」」」 なっ、今の俺はそんな風に見えているのか? くそっ、マジでどうなってるんだ! お前は誰なんだよ?!(お前がこれまで数千年に渡って積み重ねてきた、世界へ対する憎悪とでも言っておいてやろう) なんだと、ふざけるなよ……! 俺にはもはやそんなものはない、それに今の俺には関係ないことだ! 俺の体を返しやがれ!(今のお前は覚えていなくとも、俺はもう長い年月をお前と共に過ごして来たのだ。これまで繰り返してきた輪廻の数、その数え切れない人生の間ずっとな) それは過去の俺だ! 過程はどうあれ今の俺には関係ないだろう。さあ、さっさと俺の体から出て行けよ。さっきからずっと変な感じがしてたのはお前のせいだったんだな。(心配するな、こういう奴らが許せないんだろう? 甘いお前の代わりに、殺さないよう痛めつけておいてやる。お前に本当の力の使い方というものを教えてやろう) やめろ! 話を聞け! もう勝負なんてついてるんだよ!!「さっき流星とか言ったな……? 本当の流星がどんなものか、そしてその星々が砕け散る様を見るがいい。お前の







